HUMAN
STORIES
流行を超え、
長く愛せるものの
価値を見つめて
ディレクター 大熊健郎
CLASKA Gallery & Shop“DO”
KITTE 4Fものの価値は、置かれる
環境との関係性で変わる
インテリアショップ「
「当時の会長から、『クラスカ』をライフスタイルブランドを発信していく場にしたいと言われて。クリエイターのインキュベーション施設として機能させたいという想いがあったようです。そのリニューアルを進めていく過程で、自分の経験からできることとして『
大熊さんが長く勤めていた「IDEE」は海外のアイテムのイメージが強いが、「DO」では「日本」をテーマにしたことが意外だ。
「当時、僕個人の気分として、デザインコンシャスなものに疲れていたんです。グローバルスタンダードが叫ばれていた反動もあって、ローカルなものを見直したいと思うようになっていました。日本は、時計や車などの高級品に関しては、海外の商品に追いつけない部分がある。でも、日用品や生活雑貨のクオリティーは、ずば抜けて高いんです。そういう身近な価値を再発見するとともに、今の暮らしにフィットする商品を提案したいと思いました」
今ではライフスタイルショップとしてブランド力を確立した「DO」だが、開店当初はなかなか軌道に乗らなかったという。ひとつの転機となったのが、鮮やかな朱赤が印象的な九谷焼の器だった。
「九谷焼の分厚いカタログを眺めていて見つけました。派手な絵付けの器が並ぶカタログで見ただけではピンと来なかったけど、シンプルな白木のテーブルにひとつだけポンと置いたら、器の華やかさが今風に感じられるのではと思ったんです。置かれる環境との関係性で、ものの価値が変わってくるということを発見できました」
それは、「DO」の掲げる「今の暮らしにフィットする」を象徴するアイテムといえるだろう。
「ある時、お客様に『この店には嫌なものがひとつもない』と言われて、嬉しかったですね。店が目指す世界観を表していると思いました。決して高級品じゃないけど、長く使えて愛せるものを、これからも提案していきたいです」
CLASKA Gallery & Shop“DO”クラスカ ギャラリー アンド ショップ ドー
4F SHOP PAGESIDE STORY
すごく良いものでも、広く手にとってもらえなくては意味がない。
だから、実際の用途と価格のバランスが大切
「『コレ、いいよね』って言うのと、自分のお金を払って買うことには、大きな差がある」と大熊さんは言う。「私たちにとっては買っていただくことが、いちばんの評価。だから、『DO』に置いてあるものは、商品が醸し出す誠実な感じと、長く使えそうであること、そして、実際の用途と価格のバランスを大切にしています」。大熊さんが手掛けたBANKシリーズも、それをよく表している。「自宅で使うスリッパを探していて。シックなものが欲しかったけど、レザーだと2万円くらいする。スリッパにその金額はなかなか出せないですよね。BANKシリーズはあえて合皮にすることで、機能性と手頃さを実現させました」。その誠実な姿勢が、「DO」への信頼感を高めている。