STORIES
お茶漬けの概念を超えた
新しいジャパニーズファストフード
だし茶漬け+肉うどん
えん
KITTE B1
出汁の香りに誘われて、思わず足が向いてしまう「だし茶漬け+肉うどん えん」(以下、「えん」)。近年は、まるでコーヒーを飲むかのように出汁をカップでテイクアウトしたり、飲む出汁が自動販売機で販売されたり、出汁がもはや縁の下の力持ちではなく、主役になった。こうなる20年以上も前、2003年に「えん」は誕生。エリアマネージャーの藤崎佑介さんにその経緯を聞いた。
「当時はちょうどデパ地下ブームの黎明期で、和食レストランを運営していた弊社BYOに、人気デパ地下から惣菜店の出店依頼があったんです。しかも、惣菜店の広さは10坪程度が主流のところ、ご提案いただいたのは30坪。初めての惣菜店で、考えられない大きさの売り場をいただいたため、約1/3をイートインスペースにして、だし茶漬けを提供したのが始まりです。当時のイートインスペースは、ほとんどが蕎麦や寿司。ほかに手軽に食べられる和食はないかと考えたとき、和食レストランで和の出汁を大切にしてきた我々だからこそ提供できるものとして、『だし茶漬け』に行き着きました」
やがて2010年代に入り、「だし茶漬け」はブームを迎える。「えん」がその一翼を担ったと言っても過言ではないだろう。かつては食事を簡単に済ませたいときや、晩酌の締めに食べられていたお茶漬けが、ご馳走の仲間入りをした。
「『えん』では、料亭の締めに出てくる『鯛茶』や高級天ぷら店が提供する『天茶』、郷土料理をアレンジした『鶏飯』など、家庭ではなかなか食べられない本格的なメニューを手軽に楽しめることにこだわっています。提供時間が早く、さらさらっと食べられて、女性が一人でも気軽に利用できる、新しいジャパニーズファストフードを目指しました」
家庭で食べるお茶漬けの概念を超えた「えん」の「だし茶漬け」。新鮮な具材をご飯に乗せ、黄金色に輝く極上の出汁をかければ、立ち上る香りに食欲をそそられる。
「出汁は当店の命です。昆布といりこの旨みに、宗田節、鯖節、鰹節の香りとコクを加えた和風出汁に、さらに鶏がらスープを合わせて奥深い味わいに。『だし茶漬け』の具材は、出汁とご飯に合うものを吟味しています。『肉うどん』は、牛肉も出汁で炊いているんです。それによって、しっとりしてコク深く、優しい味わいに仕上げました。スープは『だし茶漬け』と同じ出汁に、牛肉の旨みが溶け込んだ煮汁を加え、さらに生姜を効かせているので、何度でも食べたくなる味わいになっています」
「だし茶漬け」も「肉うどん」も、最後の一滴まで出汁を飲み干したくなる。日本人なら誰もが知っている出汁の力を再確認できるだろう。
タイパ抜群ながら
味わいも雰囲気も落ち着ける
SIDE STORY
寿司やラーメンに並ぶ
日本食のひとつとして
「だし茶漬け」を世界に広めたい
日本人にとっては、DNAレベルで染みついていると思える出汁文化。おいしい出汁を味わうとほっとするという感覚は、日本人なら誰もが経験しているだろう。実際に藤崎さんは、かつて働いていた「だし茶漬け えん」の成田空港店でそれを実感したと言う。「出国前にしばらく食べられなくなるからと訪れる人や、海外から帰国して久々の和食に選んでくださる人がとても多かったのですが、カウンタースタイルの店舗だったので、目の前で皆さんが本当にほっとしているのが伝わってきたんです。『おいしかった』『安心した』と言ってくださるのがうれしくて、それ以来、私は『だし茶漬け』ひと筋で勤めています(笑)」。今では、この出汁のおいしさを海外にも広めたいというのが、藤崎さんの夢に。「寿司やラーメンは海外にも浸透していますが、お茶漬けはまだ認知度が低いのが現状です。『だし茶漬け』で日本人は出汁をひたひたにかけますが、海外の方はドレッシングやソースのような感覚で少ししかかけないことも。お店では身振り手振りで正しい食べ方をお伝えしていますが、いつか『だし茶漬け』が寿司やラーメンと並ぶ日本食のひとつとして世界中で愛されるようになり、誰もが食べ方を知っているくらいになったらいいなと思っています」。