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台湾屋台の味と雰囲気を
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點心飲茶酒館 祥門
KITTE B1旨みと甘みが凝縮された肉汁スープに、つるモチッとした皮とジューシーな肉あん。三者が口の中で溶け合い、旨みのハーモニーが広がる。レンゲの中の小宇宙とでも言いたくなるほど、奥が深い小籠包。その小籠包をはじめ、本場の点心が手軽に楽しめる店として中目黒で人気の「點心飲茶酒館 祥門」が、KITTEに登場した。「打ちたて、包みたて、蒸したて」がモットーの「台湾小籠包」は、3個580円という価格も驚きだ。日本では高級なイメージのある小籠包だが、「台湾の屋台ではリーズナブルで気軽に楽しめるものなんです」とブランドマネージャーの焼山祥太さんは話す。
「皮も中のスープもすべて手作りすることで、この価格とおいしさを両立しています。スープは蒸して作っているのも特徴。野菜などを入れて5時間ほど蒸し、一度ゼラチンで固めてから肉だねに練り込んでいくので、次の日にようやく包む作業に入ります。皮を伸ばす工程も含め、小籠包1個を包むのにかかる時間は、約1分。最近は1日中ずっと小籠包を包んでいます(笑)」
台湾屋台の食文化を日本で広めるために創業した「祥門」だけに、手間暇を惜しまず、本場の味をできるだけ安価に提供することにこだわった。中のスープがうっすら透けて見えるほどの皮の薄さは、市販の冷凍食品にはできない、手包みだからこそなせる技だ。
「実はこのレシピしか知らなかったので、周りの人に『そこまでやってるんだ!』って言われるまで、普通のことだと思っていました(笑)」
それもそのはず。「祥門」では、立ち上げの際に台湾から特級一級点心師を呼び寄せ、本場の技と味をみっちり教えてもらったと言う。
「点心飲茶の居酒屋を立ち上げることになって初めて台湾を訪れたんです。それまで台湾料理は八角などの香辛料が使われていてクセが強いイメージだったのですが、台湾に着いて最初に入ったレストランで『こんなにおいしいの?』とびっくりして。その後に回ったお店もどこもおいしくて、この味を日本に持ち帰りたいと思いました。研究し続けるうちに点心もどんどん好きになっていったものの、作るのは時間もかかるし、感覚の部分が大きくて本当に難しい。例えば、材料の分量は同じでも、その日の湿度で皮の硬さが変わってしまいます。包むあんの量も手の感覚だけで同じ大きさに揃えなくてはいけない。とにかく数をこなして習得しました」
そうしてたどり着いた本場の点心の味わいを、台湾屋台の雰囲気の中でお酒を飲みながら楽しめるのも、「祥門」ならでは。
「東京にいながら台湾旅行の気分を味わえるので、日常に疲れたらプチトリップしに来てください!」
まるで熱気を帯びた台湾夜市。
料理とお酒に元気をもらえる



SIDE STORY
味わいや価格だけではない、
スタッフの人柄もお客さんを惹きつける
“祥太の門出”で「祥門」。実は店名は、焼山祥太さんの名前から社長が付けたものだと言う。「恥ずかしさもありつつ、嬉しかったです。自分のものだと思って好きにやっていいと言われ、モチベーションが高まりました」。以前から社長に「居酒屋をやりたい」と直談判していたという焼山さん。念願叶っての「祥門」誕生からは二人の信頼関係が伺える。「もともと居酒屋をやりたくてこの会社に入社したんです。二十歳くらいまではバカなことばかりやっていて、それが居酒屋で働くようになってからお客さんに喜んでもらうことが多くなって。人に感謝されたのが久々だったので、接客が好きになり、生きがいになりました」。だが、「祥門」中目黒店のオープン当初から順調だったわけではない。「立地が良くて外には人がたくさん歩いているんです。でも店内はガラガラ。オープンから半年くらい経った頃にこのままではダメだと思い、お客さんとより積極的にコミュニケーションを取るようにしたら少しずつお客さんが増えていって…。嬉しかったですね」。やがて予約が取りにくいといわれるほどの人気店となり、人手不足に悩む飲食業界において「勉強させてください」と料理人が入ってくるまでに。その人気ゆえに大好きな接客ができず、「一日中、厨房で小籠包を包んでいる」と笑う焼山さん。料理の味や価格はもちろん、焼山さんの人柄もお客さんを引き寄せている一因なのだろう。





