STORIES
魚のおいしさを広めるために
普段使いできる魚定食を
一夜干しと海鮮丼
できたて屋
KITTE B1
オープンキッチンではもくもくと煙が立ち上り、焼き魚の香ばしい匂いが漂う「一夜干しと海鮮丼 できたて屋」。「食事を五感で楽しんでもらいたい」と店長の葛西亮さんが話すように、店内に一歩足を踏み入れるだけで食欲が刺激される。運ばれてきた焼き魚は、皮はパリッと、身はふっくらとして驚くほどやわらか。噛めばジューシーな脂と旨みが口いっぱいに広がり、いわゆる“干物”のイメージが覆される。
「『できたて屋』では“生干し”を採用しているんです。保存性を高めるために乾燥させる干物に対して、生干しは水分を適度に残して、より生魚に近い食感のまま、旨みを凝縮させることができます。鮮度を保てるよう、魚を捌くところから自社で一貫して加工しているのも特徴です」
皆まで言わずとも新鮮さは折り紙付き。なぜなら「できたて屋」は、KITTEで連日長蛇の列をなす「回転寿司 根室花まる」の姉妹店なのだから。「鮮度がいのち」と言い切るほど、鮮度力にこだわる「はなまる」グループの一員だ。その新業態として、2017年に定食メインの「できたて屋」は誕生した。
「日本人の魚離れが叫ばれ、特に焼き魚を食べる機会が減ったと言われるなか、外でもっと気軽に食べられる場を作れないかというのが始まりです。回転寿司で培った強みとして海鮮丼を加え、北海道ならではの魚介も提供しています。例えば、仕入れによって魚が変わる『ごちそう三種』。今日はサンマ、ホッケ、あぶらこでしたが、“あぶらこ”とはアイナメの北海道での呼び名。東京では珍しいと思いますが、北海道ではメジャーな魚なんです」「できたて屋」の魅力は、北海道の旬が味わえるだけではない。
「意外とリピーターが多いのがフライです。手間はかかりますが、材料を切ってから衣を付けて揚げるまで、すべて店内で調理しています。フライとの相性抜群のタルタルソースと特製だし醤油も、オリジナルで開発したものです」
これまた人気の「刺身丼」は好きな刺身を選んで、自分でごはんにのせるスタイル。刺身は単品でも注文できるので、定食にプラスしても良い。なんならフライも焼き魚も単品で頼めるため、組み合わせは無限大だ。しかも、定食にすると「かつおだし」が付いてきて、ほぐした魚の身をのせてお茶漬けに…なんて乙な〆まで用意されている。
「焼き、フライ、刺身とその日の気分で選べて、自分の好きなようにカスタムできるので、日常的にふらっと立ち寄っていただきたいです」
「根室花まる」がハレの料理なら、「できたて屋」はケの料理。でも、どちらも魚介を楽しみ尽くせる、まさに食のエンターテイメントだ。
“できたて”のおいしさで
お腹も心も満たしてほしい



SIDE STORY
時代と逆行しているとしても、
人と人とのつながりを大切にしたい
もともと「根室花まる」で寿司を握っていたと言う葛西さん。2020年に「できたて屋」が初の東京進出を果たすと同時に異動してきたそう。「『花まる』は常に混んでいましたし、回転寿司は次々と注文が入るので慌ただしいのに対し、『できたて屋』はゆったり過ごしたいと思って来てくださる方が多いんです。お客様と密に接する時間が長くなり、常連さんとも距離が近づいた気がします。徐々にお互いの挨拶が変化していく感覚は、これまでになかった体験でうれしいですね」。それは、おもてなしの心を大切にしている「はなまる」グループらしい喜びと言えるだろう。「『できたて屋』は注文パネルなどの機械を置いていないんです。あるのは、呼び出しボタンだけ。今の時代と逆行しているかもしれませんが、人と人とのつながりが感じられることを大事にしたい。飲食店はお腹を満たすだけの場所ではないと思っています」。空腹だけでなく、心の隙間を感じたときにも、「できたて屋」に足を運んでみては?





