KITTE STORIES|KITTE丸の内 | JR・丸ノ内線 東京駅に直結したショッピングセンター

STORIES

多様性の色“黒”が持つ可能性を
暮らしに取り入れて

kuros'

KITTE 2F

私たち、『“黒の変態”になろう』って決めているんです(笑)」

開口一番、都会的でスマートな雰囲気の女性の口から意外な言葉が飛び出て面食らった。〝黒〟の持つエネルギーとストーリーを提案するライフスタイルブランド「kuros'」の山本真生さんはこう続ける。

「アパレルでも雑貨店でも、黒いアイテムはどこにでも置いてあるけれど、黒に特化したブランドはないことが、以前から不思議だったんです。あったら面白いんじゃないかと思い、何ができるかを話し合ってみたらアイデアがどんどん湧いてきて。これはいけると、2019年に『kuros'』を立ち上げました」

母体である「東京ソワール」はブラックフォーマル専門のブランド。黒にこだわってきたルーツがあるため、会社側の理解も早くスムーズだったと言う。しかし生活雑貨は畑違い。ゼロからのスタートだった。

「まずは黒にこだわりのある作り手さんを見つけるところから始めました。そうしたら、〝黒より黒い〟 黒染めの京都紋付さんや、不可能と言われた黒いグラスを実現した田島硝子さんなど、日本中にいろんな方たちがいて、こんなにいるんだ!って感動しました。そこからどんどん広がって面白かったです」

やがて2021年に店舗がオープンし、このたび、KITTEに旗艦店が登場する。初めてのことだらけで、ここに至るまで苦労したのでは?と尋ねると、「苦労は……意外とあんまりなくて」と微笑む。

「ないことはないんですけど(笑)、黒を深掘りしていったら、その奥深さがどんどん見えてきて、ただ邁進してきた感じです。私たちが扱うアイテムは、黒いバッグひとつとっても、表だけでなく、裏地もファスナーも糸も、細部に至るまで黒で仕上げています。それを見たお客さまから『こんなのがほしかった』というお言葉をいただいたとき、私たちは黒好きの方が求める世界観を見つけられたんだという感覚があって、やって良かったと思いました」

それだけ山本さんたちを魅了する「黒」とは、どんな色なのだろう?

「いちばんの魅力は“多様性”だと思います。『黒』とひと言で言っても、綿の黒とポリエステルの黒では違う色に感じるし、素材や技術によっていろんな表情が出るんです。素材の良さも粗も目立つ、ごまかしが効かない色でもあります。着飾らなくて、誠実で、ごまかさない。そういう黒の持つ魅力と同じように、お客さまにも自分らしくあってほしいという想いで、黒のあるライフスタイルを提案しています」

「kuros'」が揃えるのは、“カラバリ”ではなく“黒バリ”。“モノ”を探すのではなく、魅力的な“黒”を求めて、今日も彼女たちは“変態的”にアンテナを張っている。

アパレルから生活雑貨、食品まで
ストーリーのある“ 黒” を

服やバッグから、食器や生活雑貨、果てはオリジナルコーヒーや調味料まで、ありとあらゆる黒いものに囲まれ、心なしかうれしそうな山本さん。職人さんのもとへ自ら出向き、「この黒へのこだわりはどんなところですか?どういう作り方を?」と質問攻めにしているそう。
服やバッグから、食器や生活雑貨、果てはオリジナルコーヒーや調味料まで、ありとあらゆる黒いものに囲まれ、心なしかうれしそうな山本さん。職人さんのもとへ自ら出向き、「この黒へのこだわりはどんなところですか?どういう作り方を?」と質問攻めにしているそう。

kuros'クロス

2F SHOP PAGE

SIDE STORY

黒への想いと作り手の技術がつないだ縁を
絶やさず守っていくために

何のツテもない、ゼロからの状態で飛び込んだ世界で、熱意を持って縁をつないできた山本さん。「作り手の方を訪ねて、『この黒へのこだわりはどんなところですか?』『織り方は?』など、しつこいくらい質問するんです(笑)。そうすると、職人さんたちから想いやこだわりがどんどん出てきて。私たちが単にモノとして見ているだけではなく、生まれた背景や想いを大切にしていることにも納得してくださいます。私たちの異常な黒への執念に興味を持ってくれて(笑)、『やったことないから、一緒にやってみたい』と言ってくださる方も。そうした黒への想いと作り手さんたちの技術とがマッチして、相乗効果で新しい黒が生まれることもよくあります」。つながった縁はどんどん広がり、アイテムの数もカテゴリーも増えていった。「でも、これだけいろいろなものを扱うようになって、課題も見えてきました。守っていかないといけない技術や伝統が本当にたくさんあるんです。だから、早く『kuros'』が世界中の黒好きな人に届くブランドになって、この先も縁を作り、つないでいきたいと思います」。

ブランドスタート時からの定番アイテム「黒墨」シリーズの「飯碗」。素材の収縮率の違いによって生地を焼いたときにシボが生まれ、その凸凹が陰影を作ることでより漆黒に見える。
金物で有名な新潟県の燕三条で作られている「ブラック ステンレス」のカトラリー。黒で「着色」しているのではなく、加工技術によって黒を「発色」させているという。柄に丸みを持たせるなど、持ったときのフィット感も追求した形に。
100年以上の歴史を持つ京都の伝統的な黒染め工場「京都紋付」の「深黒タオル」シリーズ。手間や色落ちの問題などからタオル業界では敬遠されるという黒いタオルを、"黒よりも黒く”染める「深黒(しんくろ)」という技術で実現。
江戸硝子の技術を継承する田島硝子が手掛ける「江戸の薄硝子」シリーズ。1mm以下の薄さでも透けない漆黒のグラスは職人技の賜物。マットに仕上げたkuros'オリジナルデザインは、とてもガラス製には見えない、不思議な魅力を放つ。
伝統工芸品である江戸硝子や江戸切子の技術を未来へとつないでいくため、進化し続ける田島硝子。ガラス業界では不可能と言われていた黒色を可能にした技術は、2009年に開発されたという。
江戸硝子とは、江戸時代から伝わる伝統的な技法を用いて、一つひとつ手作りで製造されるガラス製品。江戸硝子に切子加工を施したものを江戸切子といい、田島硝子ではどちらも製造している。