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すべては日本の工芸を
元気にするため

奈良県 奈良市

中川政七商店

KITTE 4F

細い路地に格子造りの町家が立ち並ぶ「ならまち」。風情ある街並みに妙にしっくり馴染む、ガラス張りの近代的な建物、それが「鹿猿狐ビルヂング」だ。「中川政七商店 奈良本店」をはじめ、飲食店や体験型コンテンツなどを楽しめる商業施設であり、300年以上の歴史を誇る「中川政七商店」創業の地でもある。一雑貨メーカーがこの施設を造った理由はただひとつ、「日本の工芸を元気にするため」だと、「中川政七商店」のN.PARK PROJECTマネージャー井上公平さんは教えてくれた。

「今、日本の工芸はピーク時と比べて市場規模が1/6程度に減っています。僕らは工芸を絶やさないために、日本各地の産地メーカーをサポートしてきました。でも、1社1社を再生するだけでは足りなかった。工芸は分業制が多いので、産地全体が盛り上がらないと生き残れないんです。だから、ものづくりを観光資源とする産業観光に取り組み、もっと人を呼ぶためには、産地に素敵なレストランや宿泊施設も必要だと気づいた。つまり、街づくりです。ものづくりが専門の僕らにとっては初の試み。まず地元からと始めたのが、奈良にスモールビジネスを生み出すN.PARK PROJECTであり、鹿猿狐ビルヂングなんです」

将来的に、この奈良での経験を他の産地にも広げていきたいと言う。これまでも、ものづくりメーカーに、自分たちのノウハウを惜しげもなく伝えてきた彼ら。今では約800のメーカーとともに、新たな日本の工芸を生み出し続けている。根底に流れるテーマは「温故知新」。

「長らく価値があったものを、現代でも使いやすくアップデートしていくというのが、僕たちの商品づくりの基本です。『中川政七商店』自体、そうしてきたから長く続いてきたし、これからも新しいことに挑戦し続けるのだと思います」

それは、KITTEが掲げる「にっぽんらしさと、あたらしさを。」に共鳴する。そのKITTE店には土地柄、産地の作り手がよく訪れ、陳列された自分たちの商品を見て、あらためて誇りを持って帰っていくそう。「中川政七商店」は、作り手も使い手も元気にする場所なのだ。

1. 奈良公園にほど近い「鹿猿狐ビルヂング」付近は、夜になると鹿が街に繰り出すことも。店外の格子には、鹿も建物も守る「鹿よけ」の役割があるそう。
2. 工芸を中心とした生活雑貨から衣類、食品まで、さまざまなアイテムが並ぶ「中川政七商店 奈良本店」。
3. 縦のラインが格子を思わせるガラス張りの通路の奥には、昔ながらの町家。「鹿猿狐ビルヂング」は屋根を瓦にしたり、軒裏に奈良の木材「吉野ヒノキ」を用いたりと、歴史と現代が融合した建物が街に溶け込んでいる。

中川政七商店Nakagawa Masashichi Shoten

4F SHOP PAGE

SIDE STORY

1 0 人に1 人でもいい。
深く共感してくれる人に向けたものづくり

「工芸は大きなマーケットではないので、自分たちが良いと思えないものが通用する市場じゃないんです」と、「中川政七商店」の井上公平さんは話す。自分たちが生活の中で使いたいもの、何を作りたいかを大切に、メーカーとディスカッションを重ねるのが「中川政七商店」流。井上さんは一緒に作るメーカーを“ 同志” と呼ぶ。「僕らが作っているのは大量生産される工業製品ではなく、職人が丁寧に作り上げる工芸品です。だからこそ、単に物を発注して終わりではなく、工場の年間の稼働状況や売上高を聞いて、お互いwin-win になるよう生産量を決める。彼らは、日本の工芸を一緒に残していく同志だと思っているので」。その想いが込められたアイテムが、深い共感を集めるのだろう。

「中川政七商店 奈良本店」がある「鹿猿狐ビル ヂング」の道路を挟んだ向かい側には、格子が特徴的な町家が並び、趣深い雰囲気が漂う。
古くから愛される奈良県の郷土玩具「張子鹿」と、観光客に人気の「ビニール鹿風船」という、新旧の奈良土産を組み合わせた「鹿コロコロ」。型を3D プリンターで造形するなど、現代的な技法を取り入れている。
産地全体を盛り上げる活動も行ってきた「中川政七商店」。最近は、工芸だけでなく、その土地の風土を伝えるために、食品や調味料のラインナップも増えている。レトルトの産地カレー「有田の煮ごみカレー」を、有田焼の器でいただく提案も。
夏の夜、蚊を防ぐため寝室に吊るす「蚊帳(かや)」。実は奈良県の生産量が全国トップクラスだそう。近年では滅多に見かけなくなった蚊帳を、ふきんとして活かしたのが「花ふきん」。「中川政七商店」を象徴するようなアイテムで、20 年以上のロングセラーを誇る。
ひょんなところから商品が生まれることも。「二重軍手の鍋つかみ」は、山形の鉄瓶職人が軍手を二重にして作業をしているのを見て、思い付いたもの。五本指になっているので作業しやすく、もちろん熱も伝えにくい。
窓に吊るされ、光をやわらげているのは、手績 (う)み手織りの麻生地。高級麻織物として知られる奈良晒(ざらし)の商いから始まった、「中川政七商店」の原点と言えるもの。