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おいしさを極めた
仙台の牛たんは
全国への恩返し
伊達の牛たん本舗
KITTE B1数センチに現れる
肉質の違いを見極める
杜の都、仙台。都市と緑が共存する美しい現在の景観は、仙台空襲後の復興で生まれ変わったものなのだそう。同様に、終戦直後に生まれたのが、今や仙台名物の代表格である牛たんだ。仙台市に本店を構える1991年創業の「伊達の牛たん本舗」も、牛たん専門店の一つ。創業は少々珍しく、土産品が先だった。
「30年前、牛たんは今ほどメジャーではなかったんです。そこで先代の社長が、『このおいしさを全国の人に味わってもらいたい』と、仙台で初めてお土産品の牛たんを作りました。当時はチルドや冷凍の技術も発達しておらず、レストランの味をそのまま届けることに相当苦心したそうです」
仙台の牛たんは厚みがありながらやわらかく、旨みたっぷりなのが特徴。中でも特にやわらかい部分を、「伊達の牛たん本舗」では「芯たん」として提供している。その違いを教えてもらった。
「たん元から十数センチの部分を芯たんと定めています。大量生産するために数字を基準にしていますが、境目にあたる肉は、実際に目で見て良し悪しを判断しているんです。たった数センチ違いの1枚を芯たんに入れるか入れないかで、ブランドを保てるかどうかが決まる。そこに対するプライドを全社員に浸透させていて、品質を保っています」
その細部へのこだわりが、牛たん激戦区の仙台で30年以上も続いている理由なのだろう。
「うちだけではないですよ。仙台の各店舗が材料から味付け、焼き方までこだわっています。だから、牛たん定食はとてもシンプルな料理だけど、食べたら店ごとに味が全然違う。各店と切磋琢磨しながら、牛たん文化をもっと盛り上げられたらと思いますね」
仙台ならではの想いもある。
「コロナ禍もそうですが、東日本大震災に狂牛病と、これまでも挫けそうな局面はたくさんありました。でもよそ見せず、牛たん専門店としてのプライドを持ち続けたから今があると思っています。当時は全国のみなさんに本当に助けられましたから、おいしい牛たんで恩返ししたいんです」
先代の全国へ届けたいという想いは、現在にもつながっていた。
伊達の牛たん本舗DATE-NO-GYUTAN HONPO
B1 SHOP PAGESIDE STORY
食糧難の時代、人々の空腹を満たした牛たん定食が
今、誰かの幸せな気持ちを満たすハレの日の料理に
終戦直後、食糧不足の時代に生まれた仙台の牛たん定食。あまり食べる習慣がなかった牛たんとテールを使い、おいしい食事をお腹いっぱい食べさせたい。その想いから、ご飯に麦を混ぜ、古漬けよりかさが増す浅漬けを付けるなどの工夫がされたといわれている。その後、牛たんを食す国や地域が増え、牛たんは高価な食材に。「昔は1,000円くらいで食べられたけど、今では気軽にランチとはいかないですよね」と亀田さん。その分、ハレの日の料理として人々の記憶に残っているよう。「親に連れてきてもらった人が、同じようにお子さんを連れてきてくれたり、結婚式の引き出物にしてくれたり…、誰かの幸せな思い出に寄り添う料理になっているのは嬉しいです」。