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現代的な
雑貨に息づく
越前漆器の技術

福井県鯖江市

Hacoa

KITTE 4F

1500年続く伝統技術を
残したいという想い

眼鏡の産地として有名な鯖江市は、越前漆器の産地としても知られる。この地に本社を構える木製雑貨の専門店「ハコア ダイレクト ストア」のルーツは、その越前漆器。代表を務める市橋人士さんが、越前漆器の木地づくりをしていた伝統工芸士の義父に弟子入りしたところから木工ブランド「ハコア」の物語が始まる。

「私は樹脂成形技師として働いていたのですが、義父の神がかった技術に衝撃を受けました。樹脂成形では、金型をひとつ作ったら機械が量産してくれます。それと同じことを義父は自分の手だけで行っていた。この技術を残したいと思ったんです」

「そのためには若者が働きたいと思う場所にならないと……」

そう思った市橋さんは、10年かかると言われた技術を3年で習得し、同時にデザインの勉強も始めた。そして2001年、越前漆器の技術をデザイン雑貨に応用した「ハコア」が誕生する。だが、1500年もの歴史を持つ越前漆器の世界では異端の存在。なかなか軌道に乗らない日々が続くが、2003年に発表した木製のキーボードが転機をもたらす。

「プラスチックにアレルギーがあるというお客様からの要望がきっかけの商品でした。部品一つひとつが手作りで非常に緻密な作業が必要でしたが、お客様は大変気に入ってくれて、瞬く間に話題になったんです。あらためて、愛着のわく商品づくりや、使う人の気持ちを考えることの大切さを思い知らされました」

愛着は作る側にも必要なもの。だから「ハコア」のスタッフは製材所で製材を経験する。丸太から木材を切り出すのは至難のわざ。作業が終わった後は、乾燥のために木材を長期間寝かせる。1年後、ようやく自分のサインが入った木材と対面したときには、感動と愛情が湧き上がるそう。

「スタッフは端材も無駄にしなくなるし、その感動は作る商品にも表れ、お客様にも伝わります。だからこそ、『ハコア』の商品は愛着をもって長く使ってくださる方が多いのだと思うんです」

そうして使い続けられた商品は味わいを増し、「ハコア」が継承した伝統技術も残り続ける。

1. のどかな里山の風景が続くなか、突然現れる現代的でおしゃれな建物の1Fが「ハコア ダイレクト ストア 福井店」。
2. 木製のその名も「木ーボード」。木の感触と「コトコト」という独特のタイピング音が不思議な感覚。写真は初代モデル。
3. 天然の無垢材が組み込まれた腕時計。無機質なものが木をまとうことで温かみを帯びる。
4. 店内には温もり溢れる商品が所狭しと並ぶ。工房が併設され、作業風景を見学可能。

ハコア ダイレクト ストアHacoa DIRECT STORE

4F SHOP PAGE

SIDE STORY

モノづくりから、感動づくりへ。
未来への歩みを止めない「Hacoa」が目指すもの

高級なイメージの輪島塗、贈答品で有名な会津漆器など、伝統工芸の漆器は全国に存在する。では、「越前漆器」の特徴は? というと、「堅牢」であること。昔から料亭や寺院など業務用の漆器として多く用いられたため、丈夫さが求められたという。だから、「Hacoa」はどんなものでも木で作れるのだろう。2014年には電卓やモバイルバッテリーなど無機質なものに木の魅力を加えるブランド「+LUMBER」を発表し、2016年にはファッションレーベル「Anewood」も誕生。そして今、目指しているのが「Hacoa VILLAGE」構想だ。ヒトの交流や体験の共有を通し、感動を生み出す拠点を作り出そうとしている。「Hacoa」が作りたいものは、もはやモノですらない。

1. 「Hacoa」の代表・市橋人士さんが大切にしている言葉。「モノ」を経て、今は「ヒト」や「感動」を作ることに興味があると言う。
2. 「Hacoa」のHacoは「箱」。お椀など木を削っていく「丸物」は主にマイナスの作業なのに対し、組み立てて作る「箱物」はプラスの作業であるところから。
3. 手作業に使われる道具類。使い込まれて味がある。
4. 「ハコア ダイレクト ストア 福井店」に併設されている工房。
5. スタッフは木に触るだけで中の水分量がわかるという。
6. チョコレートをモチーフにした木製USBメモリーは使うほどに趣が増す。
7. ほとんどの商品がその場で名入れ可能。定形ではなくオリジナルにこだわる。
8. 「Anewood」では主にコルクを用いたアパレル小物を扱う。
9. 福井店の周囲はのどかな里山の風景が広がり、漆工房が多い。