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土地に根ざし、
時代に寄り添う
香りを作り続ける

京都府京都市

薫玉堂

KITTE 4F

自分を違うところへと誘う
香りは魔法のような道具

京都・西本願寺の目の前に店を構える香老舗「薫玉堂」本店。安土桃山時代に本願寺出入りの薬種商として創業したのが始まりだ。以来425年以上、この地で商いを続けてきた「薫玉堂」が、リブランディングを決めたのは2014年のこと。負野おうの 和夫社長は当時をこう振り返る。

「時代が変わり、仏壇のない家庭が増え、仏さまに線香を供える習慣が減ってきました。それでも100年後も香りを作り続けていたい、寺院だけでなく日常的に香りを楽しんでもらいたいという想いから、私たちも変わらないといけないと決意したんです」

そして中川政七商店のコンサルティングのもと、改革が進んでいった。そのときの障害は、自分の中にあったとブランドマネージャーの負野千早さんは言う。

「既成概念にとらわれていたんです。例えば、長い線香は仏壇用、部屋焚きは短い線香と決めつけていました。リブランディング第1弾となった部屋焚き線香の開発中、中川さんに長いほうがスタイリッシュだからと言われても、一般の人に受け入れてもらえるだろうかと半信半疑でした」

ところが、蓋を開けてみれば長い線香は広く人気を集め、今では「薫玉堂」を代表する商品のひとつに。京都の名所と名物をイメージした香りにこだわったシリーズとして定着している。

「過去にも花の香りや洋風の部屋焚きは作っていましたが、新しい切り口で『京都』という場所を香りで表現したいと思いました。リブランディングにあたり、私たちの強みは『京都』『調香の技』『歴史』だと再認識できたことも大きかったですね。今では『薫玉堂』の商品に不可欠な要素です」

その「薫玉堂」が初めて京都を飛び出し、2018年にオープンしたのがKITTE店だ。コンセプトは「香りをあつらえる」。

「香りは記憶と密接に結びついていると言われています。香りが導く懐かしい時間に戻ってその頃の自分と出会えたり、また、さっぱりと気分を切り替えたり……。香りは違う気持ちや場所に連れて行ってくれる道具になります。そんなお気に入りの道具に誰もが出会える場所にしたいですね」

1. リブランディングで新たに作成したロゴマークは、明治時代に使用していたものを少し整えて復刻。
2. 日本ならではの香りの文化である「文香」。手紙やぽち袋などに入れて、贈り物に香りを添える。
3. 本店では200年以上続く香室での聞香体験も開催している。※現在は新型コロナウイルスの感染予防のため休止中。
4.「薫玉堂」が変わっていく大きな転機となった部屋焚きの線香。

薫玉堂KUNGYOKUDO

4F SHOP PAGE

SIDE STORY

歴史を大切にしながらも、時代の変化に柔軟に。
絶やさずにつないできた老舗の香り

本願寺が大阪の石山にあった頃、織田信長に攻められて難を逃れる際にお供をしたのが、「薫玉堂」の祖先。御本尊を背に負って野をお供したため、「負野(おうの)」という名字を本願寺からいただいたという。想像も及ばないほど、長く深い歴史だ。それほどの老舗のリブランディングには、並々ならぬ決意が必要だったのではないだろうか? 「世間から見ると続いて当然。維持しているだけでは褒めてもらえないんです(笑)。でも、実は続けるのはなかなか大変なこと。いかに次につなぐかを、常に考えていましたから」と負野和夫社長。老舗という肩書に安住することなく、時代に向き合ってきた「薫玉堂」の香りは、これからも暮らしに寄り添い続けるだろう。

1. 中庭の奥に見える離れは、200年以上前に建てられたもの。
2. 京都の移りゆく時代を香りで表現したキャンドル。現代の暮らしに寄り添う香りのアイテムも増えている。
3. 年季の入った百味箪笥は、かつて材料などが入れられていた。
4. 京都で採れた季節の素材から独自製法で抽出したエキスと、お香の天然原料を調合したハンドクリーム。
5. 創業当時から425年以上も受け継がれている調香帳をもとに、今も香りを作り続けている。
6. 天然の原料にこだわり、直接ベトナムなどに買いつけに行く。
7. 店内に展示されている白檀木(根の部分)。高貴で貴重な香木。
8. 梅や桜の形の匂い袋は、部屋に飾ってほのかな香りを楽しめる。
9. 古くから体に塗って使われてきた粉状の塗香(ずこう)を持ち歩ける塗香入れと塗香袋。